[好評連載中] 樹木医による「土壌のアルカリ化問題」早わかりガイド

■第二回 「コンクリートのpHは12.6」

都市化が進むにつれて、コンクリート破砕や車のタイヤなど日常生活から出る砂塵で、都市内の土壌がアルカリ化を呈していることは、すでに30年前から指摘されていた。これらは「都市化土壌」と呼ばれ、アルカリ性に固結化などの物理性が加わり、街路樹などの生育が極めて不良であるという報告もある(辰巳修三、1974、緑地環境地球論)。

最近では、建設に伴い発生する再生砕石やセメント安定処理の一部が植栽基盤に混入し、アルカリ土壌を発生させていることは、新たな緑化技術の問題点として大きく扱われ始めた。アルカリ化の原因にはコンクリートなどに加え、海浜埋立地に見られるナトリウム系のものもあるが、以降原因物質を特定する意味から、セメント系アルカリ障害に関して話を進めることとする。

コンクリート再生砕石やセメント安定処理によるアルカリ化は、それらに含まれるポルトランダイト(Ca(OH)2)と間隙水の反応により、長期に高pH環境が保たれる。やがて土中のポルトランダイトは空気中の二酸化炭素と徐々に反応して炭酸カルシウムを生成して(これを炭酸化とよぶ)次第にpHは低下していくが、その速度は土壌の物理性によるところが大きく、一般的に土壌深部は遅い。

「土壌のアルカリ化は降雨さえあれば中性近くにもっていけるので、それほど問題にはならない」という意見を聞くことがある。

アルカリは事実炭酸化などによってやがては中性近く(8.6前後)までに落ちるが、その時間軸が1年なのか10年なのかは分らないため、確実性を求める現場ではあまり頼りにならない。セメント系固化材を使用した改良土のpH変化を2年9ヶ月追跡調査したデータによると(セメント協会、1985)、地表面はpH8.9に下がっていた処理区が、10cm下ではpH11.3であったことからも、自然によるpH降下はあてにならないといえる。

pH12.6のコンクリート塊は、
長時間かけて劣化していく。
Atkinson and Guppy (1988)

コンクリートの主成分であるポルトランダイトは、水にそれほど溶けない。せいぜい水1リットルに1.6グラム程度で、その濃度は4.4×10-2モルとなる。水のイオン積で計算するとpHは12.6となり、実際の溶解液の測定結果と一致する。コンクリートの間隙水から流れ出る飽和なアルカリ溶液は、なんとpHが12.6なのである。

家庭用漂白剤がpH12.5であることから、そのアルカリの高さが理解できる。ところが、悪いことにコンクリートの中にはまだ溶けきっていないポルトランダイトが存在し、それが間隙水により次々とアルカリ化の原因となることから(アルカリニティーの要因)、アルカリ緩衝には障害土の中和滴定による確認が絶対条件となる。

それでは、どのような人為的アルカリ障害土による問題現場があったかを、過去東邦レオ㈱で対応してきたデータ(母数50現場)からみると、次のようになる。官・民別工事では官公庁が88%、緑地区分では56%が都市緑化対象で、原因別にはセメント安定処理土の一部が客土に混入した障害が48%、コンクリートガラの混入が28%で、アルカリ障害土全体の76%がセメント系障害であった。

アルカリ障害の原因のうち、
76%までがセメントであった。

また、アルカリ障害として改良した土壌は最低でpH8.0、最高はpH12.0、対象面積別では1物件当たり最大50,000m²、最少30m²で、広さの大小を問わずpH異常が問題視されていることを示していた。

以上のように、コンクリート塊からしみ出すアルカリ飽和溶液のpHは非常に高く、過去様々な問題を抱えた現場の状況からみて、アルカリ障害対策が待たれていることは間違いない。

アルカリ化している現場発生土を「低コスト」で改良する手法について→「アルカリメイト」

次回内容

■第三回 「粘土の少ない土壌は、アルカリ化に要注意」

アルカリ化の原因物質となるセメントの主成分を赤土、関西のマサ土、海砂など6種類の土壌にどれだけ加えたら、pHはどう変化するか実験してみました・・・。

執筆者プロフィール 木田幸男

1949年生まれ。昭和49年東邦レオへ入社。緑化関連事業部創設、土壌・緑化技術の研究および資材開発を主業務とする。現、専務取締役。日本造園学会全国大会分科会などに話題提供者として参加。産官学の緑化技術のパイプ的役割を果たす。(理学博士、技術士[都市及び地方計画]、樹木医[No.26]、日本緑化工学会理事、元日本樹木医会副会長)