■第十一回 「これからのアルカリ中和剤に必要な要素」
アルカリ土壌を化学的に改良してpH8.0以下にできれば、後は有機物などを併用しながら、良好は植栽基盤へと改良できる。それでは、従来行われていたアルカリ土壌の場外搬出・良質客土工法と現場発生土改良工法とでは、どれくらいの経済メリットがあるのだろうか。
今1,000m²、厚み40cm、pH9.5の改良対象土があるとする。それをバックホウで掘削後残土をダンプへ積み込み・搬出、民間処分場で処理し、その後黒土などの良質土を搬入して敷均す作業を考えた場合、費用はざっと1000万円となった。残土処理に費用の安い公共処分場を利用できたとしても、約800万円程度の試算となった。
これに比べ、アルカリメイトを使用して現場発生土を改良できれば、およそ半額の400万円ですむことが分った。内訳は、pH改良にアルカリメイトを1m³あたり15kg使用し、現地土壌の物理性・化学性改良用に有機物20%、下水汚泥堆肥5%使用し、それらにかかる混合手間を合計しても、はるかに安価であるという結果であった。
しかも、残土搬出による近隣からの運搬クレームや排気ガスの発生もなく、同時に良質土採取による自然破壊活動も必要なくなることから、現場発生土の改良から検討すべきではないだろうか。
アルカリ化した現地土壌にリン酸系アルカリ改良材(アルカリメイト)を混入して植栽基盤造成がすすめられている。この方法は、良質土壌の入れ替え工法に比べ約50%ですむことがメリットといえる。
リン酸系のpH改良材を使用するとなれば、安全に対する確認が必要となる。このアルカリメイトは土中で反応して最終的にアパタイトという安全な物質に変化する。そのため問題はないが、念のため混入土壌の魚毒性や重金属溶出試験などを行ってみたところ全く問題がないことが明らかとなった。このことから、安心して使用できる改良方法といえる。
また、リン酸系のpH改良材は硫酸系のものと比較して、反応がゆっくりであることが特徴である。
硫酸系のように、土壌と混入直後から一気にpHが降下するのではなく、反応はあくまでゆっくりである。混合後1~2日後には大まかにpHが落ち着き、有機物などとの混合はその後に行うとよい。土壌のpH降下確認はさらに時間をかけて、最低でも1週間以上経過してから行うことが望ましい。アルカリメイトは土壌混入後、土中の水分と反応するために、夏季などは潅水すると早く結果を得ることができる。
アルカリ土壌は植栽直前になって発覚することが多い。往々にして、そのような時には予算がないものである。
できるだけ安価に、確実に土壌のアルカリ障害を取り除くためには、当初からそれらを予測しながら適切に対処することが必要である。そのためには現場土壌のpH確認を随時行う必要がある。pH測定はそれほど難しい作業ではない。現場の土壌2~3箇所に深さ30~40cmの孔を掘り、上層・中層・下層の土壌を採取し、各所で約2リットル程度の土壌を即密封して検査機関に送ればよい。
弊社でも土壌分析サービスを行っていて、土壌を送付してもらえれば大まかなpH値をつかむための検査は可能である。
最後に、実際の改良作業を紹介しておきたい。
この現場はRC造の建て替え工事の際に外構土壌がアルカリ化してしまった。建設残土にコンクリート塊が多く混じっていることから造園業者が気づき、改良予算に自費を多少持ち出して改良が行われた。アルカリメイトを使用すれば客土入れ替えよりはるかに安価に改良ができることから、今後は十分な改良費用を見込んで発注が行われることを期待したい。
次回内容
■第十二回(最終回) 「アルカリ改良は、正しい原因の把握から」
まだまだ技術の普及が進んでいない「アルカリ土壌問題」。都市のコンクリート化が進む中、造園・土木・建築に携わる方々にぜひ伝えたいことは・・・。