[好評連載中] 樹木医による「土壌のアルカリ化問題」早わかりガイド

■第一回 「今、アルカリ化問題が急増している」

最近土壌のアルカリ化に関する問い合わせが急増している。それも植栽直前になって「どうしようか」といった内容が多い。ことは急を要するだけに対応は大変だが、困ったことに予算がない場合が多い。現場にとっては「まさか」の事態でもあり、当然建築や土木業者にとっては「寝耳に水」の話しである。アルカリ化は、それほど意識されてこなかった問題であるが、放っておくと将来厄介な結果を引き起こす可能性の高い問題でもある。

ある大きな建築現場の打ち合わせ室の話しである。「監督さん、あそこに積まれた残土、植栽には使えないよ」監督さん曰く「問題ないだろう、残土は知っての通り、外に出せないから使うしかないよ」「そんなこと言われても、コンクリートガラがいっぱい入っているアルカリ土には植えたくない。枯れても保証してくれるならいいけど」「あの土、そんなに問題があるの?どうしよう」こんなやり取りがあった後、ゼネコンがコンクリートガラをふるった土に仕方なく植栽は行われ、造園業者は自ら用意した有機物を混入して生育不良を回避した。

このような話しは、建築外構のみならず法面や土木構造物、海浜埋立地の緑化地で頻繁に行われている。アルカリ化した土壌に植栽すると、やがて植物がジリ貧状態に陥ることは周知の事実であるが、工程上緑化土壌にアルカリ物質が混ざることは仕方ないと今まであきらめていた。そのつけはいつも緑化屋さんが支払っていたが、もうそろそろこれを前もって解決しないと、質の高い緑化は得られない。

ゼロエミッション化で、コンクリートガラの
入った現場発生土が増えてきた。

街路樹の植栽桝にも、コンクリート再生砕石による
アルカリ化の影響が及んでいる

私がこのアルカリ問題に興味を持ったのは19年前のことである。当時は土壌のpH異常といえば酸性化問題で、「高速道路を作るために法面を切ったら酸性硫酸塩土壌が出現して、pH3.0を下回るような土壌に植栽したら全滅した」というのが話題になっていた頃である。日本造園学会では輿水教授(明治大学)や森本教授(京都大学)などが中心となり、「造成地植栽基盤のpH異常とその対策」と題し分科会などが開かれた。その時に「人為的pH異常の現状と対策」として、「土壌のアルカリ化」を話題提供させていただいたのがきっかけとなった。当時は、硫酸第一鉄や酸性石膏などが大量に使用され、有機物と併用しながら改良されていたのが現状だった。

その後、日本緑化工学会のシンポジウムなどでもアルカリ化問題が取り上げられ、pH異常といえば今ではむしろ改良の難しいアルカリ化問題が主流になって来た感もある。私自身の関心は益々高くなり、2001年4月、縁あって金沢大学大学院の佐藤研究室(現北海道大学)に入学し、研究することになった。今から考えると、よく思い切ったなと思うが、この研究室はヒ素や粘土に加え蛇紋岩などアルカリ鉱物の研究が有名で、アルカリに関する知見は非常に多かった。が、社会人にはテーマが大きすぎ、多方面に手間と時間をかけさせてしまった。4年間で曲がりなりにも博士(理学)を頂き大変感謝するとともに、研究成果が少しでも実社会に役立てればと思い、連載する決意をした。

アルカリの緩衝には、優良な有機物特に腐植物質の働きが効果的で、そのメカニズムや定量化が研究の中心であった。pHは下げるに越したことはないが、世間ではpH8以下にしないと役所検査に合格しないという事実がある。今は安価に化学的にpHを下がられる工法を開発することができて、これを機会にアルカリ問題解決に対する提案も行いながら、話を進めて行きたい。

アルカリ化している現場発生土を「低コスト」で改良する手法について→「アルカリメイト」

次回内容

■第二回 「コンクリートのpHは12.6」

人為的アルカリ障害土による問題現場について、過去東邦レオで対応してきたデータからみると、アルカリ障害土全体の76%がセメント系障害でした・・・。

執筆者プロフィール 木田幸男

1949年生まれ。昭和49年東邦レオへ入社。緑化関連事業部創設、土壌・緑化技術の研究および資材開発を主業務とする。現、専務取締役。日本造園学会全国大会分科会などに話題提供者として参加。産官学の緑化技術のパイプ的役割を果たす。(理学博士、技術士[都市及び地方計画]、樹木医[No.26]、日本緑化工学会理事、元日本樹木医会副会長)